DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)とは?ぼーっとするとひらめく理由
「なんで今、思いつくんだろう。」
お風呂でぼーっとしていたら、悩んでいたことの答えがパッと浮かぶ。誰かに説明しているうちに、「あ、つまりこういうことか」と自分がいちばん納得する。しかも、「これ、あの件にも使えるな」と話が広がっていく。
みなさんも、こんな経験ありませんか?
机の前では全然ダメだったのに。ひらめきというのは、なかなかこちらの都合に合わせてくれない。その不思議を考えるヒントが、DMNという脳のネットワークだ。
DMNとは?ぼーっとしていても、脳は動いている。
DMN(デフォルト・モード・ネットワーク/Default Mode Network)とは、記憶を思い出したり、未来や他人の気持ちを想像したりするときに関わる、脳のネットワークのこと。目の前の課題から注意が離れた時間にも働いている。[1][2]
ただし、DMNは「ひらめき専用スイッチ」ではない。創造的に考えるときには、考えを整理し、吟味するネットワークとの連携も見られる。[2] たとえるなら、自由に案を出す人と、それを使える形にする編集者。ひらめきは、チーム仕事なのだ。
実際に、一度考えた問題から離れ、頭をあまり使わない課題を挟んだほうが、その後の発想がよくなった実験もある。[3]
まず考える。そのあと、考え続けることから離れる。机の前で悩んだ時間も、無駄ではなかったのかもしれない。
私の場合は、露天の壺湯と、筋トレの合間。
ここからは、あくまで私個人の実感だ。
同じ入浴でも、露天の壺湯に入っているときは、ふっと考えがつながりやすい。筋トレのインターバル中や、誰かに説明している最中にも、よく起こる。
反対に、食事中や、椅子に座って「さあ考えるぞ」と構えているときに、よいアイデアが浮かんだ記憶はあまりない。
サウナも、私はテレビがないほうがいい。せっかくひと息ついているのだから、今は新しい情報を入れたくない。
足りないのは情報ではなく、すでに持っている情報を、自分の言葉にする余白なのではないか。そんなふうに感じている。


寝起きが一番?それとも、お風呂?
「どこで休むと、いちばんいい考えが出るのか」は気になるところだ。ただ、今回紹介する研究から、場所の順位までは決められない。そこで、何をしたいかで使い分けてみる。
寝起きは、浮かんだことを拾う時間。睡眠を挟んで問題の隠れたルールに気づきやすくなった研究はあるが、「寝起きが最強」と分かったわけではない。[4] 目覚め直後は判断力が戻りきっていないこともあるので、まずメモだけ。採用するかは、目が覚めてからでいい。[5]
お風呂や海は、問いから少し離れる時間。答えを出す義務を持ち込まず、湯に浸かったり、景色を眺めたりしてみる。水辺での散歩で気分が改善した研究もある。[6] 「解決はしていないけれど、さっきほど大ごとに思えない」。そんな変化も、悪くない。
サウナは、すっきりした感覚を大切にしつつ、結論を急がない。脳波や主観的な明瞭感を調べた研究はあるが、創造力や俯瞰力を直接確かめたものではない。[7] 気持ちよさと、判断の正しさは分けておこう。
「別の言い方をすると?」が、ひらめきの呼び水。
私が試したいのは、考えが止まったときに、いったん言葉を変えてみることだ。
別の言い方をすると?
つまり、一言でいうと?
この考え方を、ほかのことに使うなら?
例えば、「何度説明しても伝わらない」。これを「情報が足りない」と捉えると、説明を増やしたくなる。でも、「相手が知りたい順番になっていない」と言い換えたら、やることは増量ではなく、並べ替えになる。
さらに、「相手が受け取りやすい順番にする」と短くすれば、商品ページにも、社内の指示にも、子どもへの説明にも応用できそうだ。
言い換えて、シンプルになって、ほかの場面へつながっていく。私が面白いと感じるのは、この瞬間だ。
これは思考の工夫の一例で、言い換えがDMNを活性化すると証明された手順ではない。そして、短くすれば何でも正しくなるわけでもない。「大切な条件を落としていないか」は、あとで確かめたい。
焚き火には、聴き上手をひとり。
一人ではまとまらなかった考えが、誰かに話したら、するっと言葉になることもある。
その相手は、すぐ答えをくれる人でなくていい。「それで?」「どこがいちばん気になる?」と、急かさず聴いてくれる人がいい。
注意深く、評価を押しつけずに聴いてもらうことで、話し手の不安が減り、自分の考えが明確になった実験がある。[8]
焚き火がそんな会話に合いそうなのは、黙っていても、二人で同じ火を見ていられるからではないか。これは私の見立てだ。火に特別な効果を求めるより、沈黙を気まずくしない相手を選びたい。
答えが出ることもあれば、「そもそも、悩んでいたのはそこじゃなかった」と分かることもある。よい対話には、どちらの面白さもある。
何を飲む?何を食べる?
今回の研究からは、「これを食べればひらめく」という特別な食品は勧められない。
コーヒーは楽しんでいい。カフェインを使った実験では、答えを絞る問題解決は改善した一方、アイデアを広げる力には有意な改善がなかった。[9] カフェを、浮かんだ案をノートにまとめる場所として使うのも一案だ。
ただ、夜は眠りへの影響を考え、カフェインのない飲み物を選ぶ方法もある。[10] お風呂やサウナでは水分補給を忘れず、長時間の我慢や湯船での居眠りはしない。[11]
あとは、メモが一つあればいい。思いついたことを、覚え続けなくて済むように。
次に行き詰まったら、「別の言い方をすると?」と一度問いかけて、少し離れてみる。浮かんだら書き留め、正しいかはあとで確かめる。
それでも何も浮かばなかったら?
その日は、ただ気持ちよく休めばいい。
休憩にまで成果を求めたら、休む場所がなくなってしまう。
参考文献を確認する(11件)
- Raichleら(2001)|脳のデフォルト・モード
- Beatyら(2015)|創造的な発想とネットワーク間の連携
- Bairdら(2012)|問題から離れる時間と創造的な発想
- Wagnerら(2004)|睡眠と洞察
- Jewettら(1999)|目覚め直後の睡眠慣性
- Vertら(2020)|水辺での散歩と気分
- Changら(2023)|サウナ後の脳波と主観的な状態
- Itzchakovら(2018)|質の高い傾聴と考えの明確さ
- Zabelina・Silvia(2020)|カフェインと創造的思考・問題解決
- Drakeら(2013)|就寝前のカフェイン摂取と睡眠
- 消費者庁(2024)|サウナ浴での事故に注意